外断熱化や高気密仕様の工法等で 曾孫までも住み継ぐ住環境再生構想

相模台ハイツ第2次再生工事

相模台ハイツでは過去何度も外壁等の防水改修を行ったが、補償期間内に一部の外壁や屋上からの浸水による室内漏水が起こっていた。2012年の計画修繕を準備する専門委員会で検討を開始。マンションが第1種住宅専用の高さ制限で建替えができない。
市内のコンサルタントの助言を得て「単なる大規模修繕工事ではなく再生工事と位置付け、当初入居者の曾孫までも住み継ぐ」という高経年マンションの再生を構想した。
73-16-01-2 従来の微弾性塗料等の塗り替えでなく、「外断熱化により“温度サイクル”を緩和することが大切」などの情報を得て開眼したという。
太陽の直射や寒暖の差で膨張収縮を繰り返して構造強度が低下するが、それを防ぐために外壁を断熱材で覆う工法である。
また、前回の工事で更新した屋上防水も劣化して漏水事故が発生しており、コストは高いが長期間にわたる防水性能をうたうドイツ製の超耐久性シート(POLYFIN)を断熱仕様で敷設することにした。
外壁に断熱材を設置した後は足場を固定する穴を開けたくないので、外窓も交換した。その際「省エネの暮らし」を考えて断熱効果を期待できる複層(ペア)ガラスを採用し、高気密仕様の窓サッシをカバー工法で更新。同時にドアポストや扉まわりも隙間風の解消を考えて「省エネと耐震の玄関ドア」に更新した。
このような再生工事から3年、外断熱化や高気密仕様の工法等で、真夏は27 ~ 8℃、真冬でも17 ~ 8℃という住環境を得て冷暖房の電気使用量は大幅に減った住戸もあるなど、明らかな変化を実感している。
真夏は暑くて眠れなかった最上階の5階住民は「昔のようにムッとすることがなくなった」、1階では床下の外気を遮断したので、真冬の夜中にトイレへ行くとき床の冷たさがなくなり「冬の夜の悩みがなくなった」との話しも聞く。
しかし、初めから維持管理に熱心で管理運営が活発だったというわけではない。歴史を遡ると、相模台ハイツは1971年竣工。管理組合はなく73年結成の自治会が当初の瑕疵補修で販売会社と折衝し共有物委託契約を結んだ。建物と設備の維持保全検討は数人の一級建築士を中心とする建築補修委員が担った。
73-16-01-3 とはいえ販売会社の管理は業務を下請けに丸投げ。84年に管理組合を設立し管理会社を変更したものの、管理会社主導の修繕工事は長期の計画をもたず、度重なる設備の事故で緊急修繕を余儀なくされていた。
96年、「これでは住民が積み立てている特別修繕費は有効に使われない」、「自分たちで管理しなければ」と気がついた理事が、「自主的に管理する」ことを目指す管理組合団体の啓発を受けて、翌97年、築26年目にして第一次再生工事を実施。内容は①地下受水槽の廃止、高架水槽の撤去、地上設置の受水槽による加圧給水への切り替え、②外壁や屋上防水更新、③外構の更新と花壇の新設の3本立て。
同時に区分所有者のための管理組合づくりに取り組み、必要資金の計画的蓄積を目指す修繕積立金増額と併せて、管理会社の変更に取り組んだ。
10年に相模原市の耐震相談制度を使って耐震設計のチェック、12年に耐震診断を実施してIs値0.8以上の評価を得た。
また、住民組織は管理組合、自治会、自主防災隊が確立しており、桜まつり・夏祭り、春の防災セミナー・秋の防災訓練、などを通じてコミュニティー形成にも尽力している。

工事データ

○工事名/相模台ハイツ第2次再生工事 ○建物概要/1971年(昭和46年)6月竣工・WRC造(壁式構造)、RC造(鉄筋コンクリート構造)・地上5階建て・4棟・110戸 ○発注者/相模台ハイツ管理組合  ○主な工事内容 ・ 躯体補修/建物共用部分全般にわたり、ひび割れ・浮き・欠損等の劣化状態を調査し、各所にそれぞれ合った工法にて補修 ・ 高圧洗浄/建物の既存の汚れや工事による埃を洗い流す ・ 塗装/バルコニー内壁、階段室手すり壁、外壁、庇、鉄部の塗装 ・防水改修/バルコニー床の塩ビシート張り ・ 外断熱/既存の外壁に50mm厚のEPS断熱ボードを張り、仕上げ塗りを施す ・ 屋上断熱強化/屋上防水には25年保証の断熱・超耐久性シート(POLYFIN)を設置 ・ その他/窓サッシの更新(カバー工法)と複層(ペア)ガラスの採用、耐震・耐熱性の玄関ドアへの更新、バルコニー既存の鉄製手すりをアルミ製に交換 ○工事期間/ 2012年8月20日~ 2013年3月27日