南永田住宅第2回大規模修繕工事
第1回大規模修繕工事は躯体補修や鉄部塗装など、経年劣化した個所を直そうというだけだったが、2回目では建物の耐用年数を延ばすための補修・修繕にとどまらず、住民の高齢化に対応したバリアフリー化、団地活性化を目指して若い人にも魅力ある施設へのグレードアップ化を積極的に取り込んだ。
グレードアップ工事は、まず各棟の玄関である1階ピロティー部分の改修。若い人が入居を決める際の印象がよくなるように、きれいな意匠に模様替えしてメールボックスを新設した。
各戸の玄関回りもアルミ製に変更。見栄えがよくなるのと同時に塗り替えなどの修繕の必要がなくなった。
古くなった階数表示板、掲示板、住戸案内板の全面的に取り替えてきれいにした。
階段には手すりを設置。廊下の電灯を人感センサーにして、明度も10Wから20Wにアップ。廊下の下が住戸になっていることから、防音性の防水シートを張った。
注意を払った点については、工事がはじまる前から工事に関するアンケートを繰り返し、合意形成に努めたこと。
組合主導の住民説明会を集会所で3回に分けて行い、設計事務所による工事直前の説明会も学校の体育館を借りて2回行った。工事用掲示板を設置してアンケート結果や工程スケジュールを掲示したり、停電や駐車場の移動などは戸別にチラシを配布するなど、住民に対して工事の意識付けを十分に行った。徹底的に情報を流すことは管理組合の透明性はもとより、住民みんなから何とか工事への理解を得るためでもあった。
大規模修繕工事実行委員会のメンバーは「工事中の検査はすべて実行委員のメンバーが立ち会い、住民の立場から思ったことを口にした。プロは機能面を重視しがちだから、素人が口を出すことで見た目の出来栄えがチェックできたと思う」と話す。
設計事務所選定では5社に見積もりを依頼し、3社に対してヒアリングを行った。リニューアルの経験だけでなく、新築設計の技術や経験などを重視して1社に絞った。
一方、施工業者は、大規模団地のため、工区を2つに分けて2社に依頼。見積もり参加は公募した結果、19社から応募があり、書類選考後、11社に見積依頼をした。
見積書を比較して4社に対してヒアリングを実施。意識的にゼネコンとリニューアル専門会社の2社を選定し、競争意識に期待したという。
工事後、コンクリートのひび割れやタイルのはがれなど、外壁の老朽化が予想以上にひどくて工事量が増え、「カネのかかる工事だったなあ、というのが実感」と実行委員会メンバー。
「設計事務所の経験から予備費を1割取っておいたのが幸いして予算内でできたが、足場を組んでからでなければ、直す個所の数量はわからないものだと思った」。
しかし、これで次の15年まで、躯体工事をしなくてもよくなった安堵は大きい。「今後は住民のみんなで協力して、新しくなった建物、施設を大切にし、維持管理をきちんと行っていきたい」と工事の感想を述べている。