タイル傷つけず「つかみ金物」で足場固定 打ち放し面にはフッ素樹脂光触媒を採用

キングマンション千船参番館・四番館・団地共用部分大規模修繕工事

 2000年竣工のキングマンション千船壱番館(119戸)と2001年竣工の弐番館(153戸)で3年前、大規模修繕工事を実施。その際の設計・監理者の㈱リノシスコーポレーションと施工者の協立技研㈱が、壱番館・弐番館の実績のもとに参番館(111戸)・四番館(138戸)の大規模修繕工事を受注した。
 管理組合から評価されたもののひとつに足場を固定するために用いた「つかみ金物」の提案がある。キングマンション千船は外壁が全面タイル張りのため、タイルを傷つけない工法を採用したのだ。

 一般的に作業用の仮設足場の設置する際、足場と建物をつなぐために外壁に穴を空けて躯体にステンレスのアンカーを打ち込む。こうした場合、工事終了後はアンカーを埋めたまま部分的なタイル補修を行うため、当然、穴埋め跡が残ったり、目地の色浮きが生じることになる。アンカーを入れたままで、躯体にも良い影響は与えない。
 こうした事態をさけるために提案したのが、「つかみ金物」。各階のバルコニーや外廊下の鼻先に設置し、外壁を傷つけずに足場を固定したわけだ。
 ただし、本工事では外廊下側のみ採用。バルコニー側は手摺壁の厚みや逆梁で採用ができなかった。工法が良かろうとも現場の状況判断を優先させるのは基本。同じマンションでも部位ごとに形状が異なるケースもある。
 次に工事の特徴は、打ち放しコンクリートの雨垂れによる汚れの除去。4棟共有のコンクリートゲートにはフッ素樹脂光触媒コーティングを提案した。

 フッ素系樹脂の使用で雨水などが玉のようにならず、親水性といって壁と汚れの間に入り込み、汚れを浮き上がらせる。
 また、光触媒に光があたると活性酸素が発生し、これが汚れを分解・汚れの付着力を弱める。さらに雨によって付着力の弱い汚れが洗い流されやすくなるという仕組みだ。
 壱番館・弐番館で施工したゲートでは塗装後2年経過したが、雨垂れ汚れもなく、美しさを維持している。
 協立技研ではメーカーの特約代理店をしているため、安価で提案ができることが採用に至った要因でもあるようだ。
 とはいえ、やはり現場の評価が壱番館・弐番館から参番館・四番館へと継続受注できた大きな理由といえそうだ。現場代理人を務めた久宝政洋・一級建築士を担当工事長とすることで管理組合に納得いただいた経緯も記しておきたい。

 

工事データ

○工事名/キングマンション千船参番館・四番館・団地共用部分大規模修繕工事 

○建物概要/ 2003(平成15)年、2004(平成16)年竣工・SRC造地上15階建・2棟・249戸(参番館111戸、四番館138戸) 

○発注者/キングマンション千船団地管理組合 
○主な工事内容/・共通仮設・直接仮設・下地補修・シーリング・外壁塗装・鉄部塗装・防水・ごみ置き場修繕・外構・その他工事 ○工事期間/ 2015年1月〜 2015年7月