費用・施工性で「露出配管」を採用 「見栄えは悪いが、背に腹は代えられない」

TSマンション大規模修繕工事

配管の腐食が進み、どこから漏れているかわからない漏水事故が年に3、4回発生するようになった。
専門家によるファイバースコープの調査を実施。調査の結果、管理組合は「共用部分も専有部分も修繕しないと漏水事故が頻発する」状況であることを知った。修繕に対し、受水槽方式を撤去して直結給水方式を取り入れたのは、設計・監理者からの提案。水道本管から引き込んだ水に増圧ポンプで圧力を加えて、直接各戸の蛇口まで給水する方式への改修を計画した。

直結給水方式にすると、受水槽に貯水しないので水道本管から直接衛生的な水が供給できる、水槽のメンテナンス費がなくなるなどといったメリットを得ることができる。
ただし、問題は専有部分の工事について。各戸に委ねると修繕しない住戸が出て、修繕状況がバラバラになる。
また、共用部分のみの修繕で、なおかつ直結給水にシステム変更すると、時間帯によって圧力が高くなるケースもあり、専有部分の老朽配管が破裂する可能性が高くなることが予測できた。
なるべく費用の支出を抑えるため、選択したのが「ほぼ露出配管」で給水管交換工事を実施すること。費用面だけでなく、改修をしにくいパイプスペースなど、施工性の問題もあり、“露出” 配管が選択されたといえる。


管理組合によると、「やるのなら専有部分も含めてやらないと、漏水事故はなくならない」を前提に住民の説得に当たったという。
しかし、そのためには資金の確保が問題となる。「露出配管は見栄えは悪いが、背に腹は代えられない」。そう結論付けた。
共用・専有部分に対応した工事手法の検討、資金計画、各戸への周知、意思の統一に1年半を要した。その間に修繕積立金の額も工事費用に合ってきた。
管理組合では今でも「共用部分だけでなく、専有部分の配管も手がけた今回、管理組合が音頭を取って、リーダーシップを発揮しないとできない工事だった」と話している。

 

写真の高架水槽はすでに撤去された。これまで、水道本管から受水槽に貯水し、揚水ポンプで高架水槽まで水を揚げて、自然の流下で各戸の蛇口まで給水していた。今後は、下から増圧ポンプで直接蛇口まで揚げるだけとなる

工事データ

○建物概要/ 1977(昭和52)年9月竣工・RC造・1棟・5階建て・68戸 ○発注者/ TSマンション管理組合
○ポンプメーカー/㈱川本製作所 /工事名/ TSマ
ンション大規模修繕工事 ○主な工事内容/共用部分、専有部分の給水管交換/高架水槽方式から水道管直結増
圧給水方式へのシステム変更/共用部分のガス管交換 ○工期/平成18年7月~ 12月 ○工費/約4,000万円