街道沿いの複合用途マンション 資材の搬入出、安全通路の確保に配慮

シャルム新丸子大規模修繕工事

2000年に完成した新しい丸子橋は道路を拡幅し、これにあわせて綱島街道も2車線道路へと拡幅が進んだ。かつて「丸子橋に上下線○キロの渋滞です」といったラジオの交通情報はもうひと昔前のことになった。
2001年から理事長を務めた筋田一行さんによると、「車の排気ガスと騒音がひどかった。だけど昔は多摩川の花火がよく見えたのにね」。新丸子周辺は、1990年後半から高層マンションが林立した。シャルム新丸子は高層住宅としては周辺で一番古い建物だった。多摩川上流の方まで見渡しがよく、住居内からも富士山が見えたという。
1996年に1回目の大規模修繕工事(屋上防水、外壁塗装、照明器具、給水設備交換等)を行った。「居住者全員一致参加による組織と、水も漏らさぬ協力のもと自力で大規模修繕工事を実施した」という筋田さんの一文が、かわさきマンション管理組合ネットワーク発行『THE 川管ネット NEWS』第4号(2002年6月)に掲載されている。

筋田さんは2001年に産声を上げたばかりの川管ネットで、シャルム新丸子での自主管理の経験を生かして役員として長年活躍された。シャルム新丸子では2006年、現在の中畠秀作さんが理事長となり、自身は副理事長としてマンションを見守っていたが、大規模修繕工事完成を見届けて他界された。

シャルム新丸子大規模修繕工事の特徴は、「街道沿いの複合用途マンション」という点にある。
騒音が発生する作業の際は営業時間や作業可能な時間帯を確認して、それに合わせて工事を行った。店舗出入口には水平養生・トラクッションを設置し、お客への配慮を工夫。作業中はガードマンを立て、安全対策を施した。
仮設現場事務所はマンション2Fの会議室を利用した。作業時間外は敷地内に資材置き場を作り、フェンスで囲いをして施錠するなどの工夫をした。

今回の大規模修繕工事は中畠理事長が中心となって準備、計画、実施が進められた。
自主管理の管理組合で、設計コンサルタントを置かず、工事会社に設計から施工までを一任する「責任施工方式」を採用して、工事を成功に収めている。
近年、「設計・監理方式」を採用し、設計コンサルタントに「お任せ」となってしまっているケースを多々見かける。
工事会社の現場代理人によると、「理事会の皆さんはとても仲が良く、明るい雰囲気で、マンション自体にすごく愛着があり、理事会等で挙げられた事項に対して住民さんを第一に考え、細かいところまで話し合いをしていました」と話す。
しっかりと組合運営を行っている管理組合であれば、コンサルタントが入らなくても工事会社との関係も良好に、スムーズな工事進行を行うことができるのだ。

工事データ

○建物概要/ 1981年(昭和56年)11月竣工・RC造・1棟・8階建て・3階~8階住戸48戸+1、2階店舗、事務所 ○工事名/シャルム新丸子大規模修繕工事 ○発注者/シャルム新丸子管理組合法人  ○主な工事内容/共通仮設/足場仮設/下地補修(塗装面、タイル面)/シーリング/高圧水洗浄/鉄部塗装/外壁塗装/バルコニー防水/共用廊下溝・階段室床の防水/その他、面格子脱着・消火器プレート取替え・鉄部溶接・各所クリーニング
など ○工期/平成25年8月20日~ 11月30日(約100日間)