管理組合が工事会社、工法、材料を選定 大切なのは発注者としての自覚

第2モアクレスト上星川大規模修繕工事

今回紹介する工事の大きな特徴は、大規模修繕工事の象徴でもある仮設の作業床や通路である足場を設置しない工事としたことである。建物診断の調査結果からも「この程度の浮きの枚数ならば、総足場ではなく、ブランコやゴンドラでの補修も可能であり、経済的」という報告書を受けた。
これを受けて管理組合が発注したのが㈱エーファイブ。ロープ・ブランコ工事を手がける数少ない工事会社である。

48-2-8「ブランコ工法を売りにしているとはいえ、足場を組んだほうがいい個所、ロープのほうがいい個所など、状況に応じた提案をさせていただいています」と㈱エーファイブの木村康三社長。

今回のブランコ工法の採用で、仮設足場の費用約1,300万円が250万円に削減できた。工事が終わったら取り外す足場にお金をかけるのではなく、外壁用保護塗装材のグレードアップやマンションの美化など、手元に残るものにお金をかけたようだ。
そもそも管理組合の知識・意識レベルは高い。修繕委員会を中心にあらゆる情報を集め、自分たちで判断できる体制ができているのだ。
例えば、大規模修繕工事予算のための建物診断は「もったいない」という。お金をかけてタイルを打診し欠陥率を推測しても、3%以下になることも10%以上になるこ
ともない。お金をかけずに5%で予算を見積もって、最後に実数清算すればよい。その他修繕個所も目視でよく、住民アンケートの情報収集が貴重で、それで十分という考えだ。
結果、今回は設計・監理者ははぶき、管理組合が工事会社、工法、材料を選んだ。工事会社にしても、ブランコ工法の外壁担当と、屋上防水や内壁塗装などの担当会社を分けて2社と契約するなど住み分けも行っている。

タイル補修は、SMC工法(ステンレスピンニング工法)を採用。特殊なエポキシ樹脂の注入ドリルを用い、余分なエアー溜りを発生させることなく、穿孔→樹脂の注入
→ピン挿入の3工程、騒音も極めて小さい。
アルミのサビ対策も、管理組合がアルミ・スチール・ステンレスの補修会社・工法を探し出して採用した。

こうした工事ができるもの中心となるリーダーがいればこそ。修繕委員長の川端志行氏は「コンサル会社による品質管理や検査なんて不要。現場代理人や職人に『こ
のマンションのために良い仕事をしたい』と思ってもらえることがとても大切。工事前に住民と職人で交流会をやって志気を高めてもらいました」。
管理組合からの配慮がどれだけ工事の品質をあげるか―大切なのは、やはり発注者としての自覚である。

工事データ

○工事名/第2モアクレスト上星川大規模修繕工事 ○建物概要/ 1989(平成元)年12月竣工・RC造・7階建て・78戸 ○発注者/モアクレスト上星川管理組合  ○主な工事内容/外壁補修/シーリング/鉄部塗装/バルコニー防水/屋上防水/エントランス屋根防水/その他建築雑工事 ○工事金額/約7,000万円 ○工期/平成25年9月~平成26年3月