大規模修繕委員会を中心に 修繕、防災、環境問題を検討・実践

シーズウィッシュ志木大規模修繕工事

大規模修繕委員会のメンバー(左から3人目が伊藤雅之委員長)と現場代理人の須貝和進氏(右から2人目)

埼玉県志木市にあるシーズウィッシュ志木は400戸を超える大規模マンションである。
建設以前からあるけやきや桜の木を保存したエントランス、東京ドームの約1.5倍の敷地面積を生かした様子から竣工翌年の2002年、埼玉県より「彩の国さいたま景観賞」を受けた。
大規模修繕工事の計画は大規模修繕委員会が発足した3年前からスタート。建築士やマンション管理士、土木関係等の資格を持つ専門家6人が立候補で集まった。

「当初は大規模修繕工事では改善工事を検討していましたが、東日本大震災で方針が変わりました」というのは伊藤雅之委員長。
まずは建物診断を行い、基本的な1回目の大規模修繕工事の筋道をつけた上で、大震災を想定した検討をはじめた。
例えば、太陽光発電の設置。
しかし、蓄電池の装置に何千万円もかかることがわかり、断念した。昼間にためたエネルギーを売電して管理組合収入に充てるという方法もあったが、本来の趣旨は節電や管理費の節減ではなく、大震災対策であることから見送った。
その代わりではないが、新設したのが非常用電源システムの導入。つまり、自家発電機の設置で、自家発電機の燃料を供給するための中間タンク(油庫)も置き、非常時には48時間以上の電源の供給を行えるようにした。
大規模マンションだけにエントランス等の共用部分には大型ガラスが使用されているため、飛散防止フィルムを施工。「住戸から中庭に非難する場所なのに、そこにガラスの破片が降っては大変」というのがその理由である。

また、これまでなかった防災倉庫も設置した。設置場所は1階のピロティー部分で、壁で囲み、新設の防災倉庫とした。
施工会社選定では、まずはコンサルタントを大規模修繕委員会で選び、コンサルタントの助言のもと、シーズウィッシュ志木管理組合のホームページで入札用のページを作って「リバースオークション」を行った。

普通、オークションは欲しい人が値段を上げて買い取るものだが、シーズウィッシュ志木管理組合の場合は「リバース」なオークションなので、受注したい工事会社が値段を勉強していくということになる。
当初、30社が名乗りを上げたが最後は4社にヒアリングをして「予定現場代理人」の選択を最優先し、施工会社は㈱アール・エヌ・ゴトーに決まった。

工事がひと段落した後、専門家の多い大規模修繕委員会のメンバーでも改めて「現場代理人が工事を左右する」と語る。職人のあいさつなど工事中の住民対応、的確な指示、清潔な作業場等、現場代理人の力量が工事の良し悪しの決め手になるという。管理組合では、㈱アール・エヌ・ゴトーと現場代理人の須貝和進氏に感謝状を贈った。

建設以前からあるけやきの木。「彩の国さいたま景観賞」受賞の一部分である

工事データ

○工事名/シーズウィッシュ志木大規模修繕工事 ○建物概要/ 2001(平成13)年6月竣工・SRC造・14階建て・429戸 ○発注者/シーズウィッシュ志木管理組合 ○主な工事内容/⑴共通仮設工事(現場事務所、仮設トイレ、仮設倉庫の設置・解体、足場・メッシュシート養生の組み立て解体等) ⑵下地補修工事(高圧水洗浄・タイル薬品洗浄、タイル面の欠損・浮き・ひび割れ補修) ⑶シーリング(外壁目地・雨掛かりサッシ廻り等の古いシーリングの打ち替え) ⑷外壁等塗装(バルコニーや廊下、外部階段の壁、手すり壁及び鼻先、天井の既存塗装部分の塗装等) ⑸防水(【屋上】アスファルトシート防水、【ルーフバルコニー・大庇等】ウレタン塗膜防水、【バルコニー】笠木・側溝・立上りへのウレタン防水及び床シートの貼替え、【開放廊下】側溝・立上りへのウレタン防水、床シートの貼替え、【外部階段】側溝・立上りへのウレタン防水) ⑹鉄部塗装(竪樋、隔て板、排水ドレン、玄関扉枠、MB・PS扉、消火栓BOX各所端子盤、各所扉等、外構廻り、3段ピット式駐車場パレット) ⑺その他(エントランス回りの大型ガラス飛散防止フィルム、鳥害対策、共用ルーム改善工事、給水ポンプ更新、非常用電源システム改修、エキスパンションジョイント改修、EV扉シート貼り、防災倉庫新設など) ○工期/平成25年1月21日~平成25年8月20日