全建セミナー参加で自立管理組合へ、「管理組合も勉強し、知恵を絞らないと
竣工時には自治会が建物管理を運営。築12年後の1986 年、管理組合を設立した。
以来、1988、1998、2008、2018年と10年周期で大規模修繕工事を実施してきた。4回目の大規模修繕工事となる今回は、6回目の理事長職となる森本幸ニ郎さんの リーダーシップにより設計コンサルタント、施工者の選 定など、管理組合独自で行った。また、2000年に修繕検 討委員会を立ち上げて以来、さまざまな職業のメンバー からの貴重な意見を得ながら、その集大成が実った工事 といえるかもしれない。
さらに、これまで管理会社に頼っていた建物管理から、 管理組合の自立ができたのは2013年4月の全国建物調査 診断センターのセミナーへの参加だと、森本理事長は言 う。
「大規模修繕工事は管理会社から提案されてから検討をはじめるのではなく、4、5年前から情報を収集してお くべきだと思った。このセミナーに出て、設計コンサル タントを2社紹介してもらい、管理会社の設計・監理費がすごく高いこともわかった」
もともと雨漏り問題に苦慮してきた。改修をしても住 民から再度雨漏りの被害報告が上がってきてしまう。
マンションのようなコンクリート建物は防水層が劣化 した場合、雨水がコンクリート内部に浸入し、鉄筋をサ ビさせてコンクリートを中性化させるほか、水の通り道 を作り、どこから雨漏りするか原因個所をつかむことが 難しい。
そこで2017年、大規模修繕工事に先駆けて妻壁のみの工事を実施。アクリルウレタン系の塗料「クリアウォール」 をタイル張り仕上げ材に使用し、10年保証を取り付けた。
このときにはすでに年1回の建物診断業務を管理会社 から設計コンサルタントに移行。コンサルタントが試算 した大規模修繕工事費全項目の中で、特に足場工事費が 2008年当時の金額と比べ大幅に高くなっていた。このため管理組合自身で足場専門業者に接触し、見積もりを取り寄せた。そこで足場工事費の水準が分かり、それをもとに再度コンサルタントにより7社から見積もりを取り寄 せてもらい、見積金額を判断した。
森本理事長は「管理組合は全ての工事で管理会社、コ ンサルタントに全て任せきりはだめ。管理組合自身で判 断できるよう勉強し、知恵を絞らないといけない」と話 している。
施工者の日装は7社のうちから選定。2017年妻壁の改 修提案が非常によかったこと、管理組合の実情をよく把 握してくれたことで4回目の大規模修繕工事の施工担当 に選ばれたそうだ。
「作業員の中には中国人、ミャンマー人もいて、居住者の中からは心配の声もあったけど、まじめによくやって くれた」と、理事長として工事の完成にとても満足して いるようであった。
(大規模修繕工事新聞112号)
修繕検討委員会と日装の社員。中央が森本理事長
修繕検討委員会との定例会の様子
工程検査にも委員会が同行。 現場代理人から説明を受ける
漏水により先に工事を行った妻壁
建物の西側も開放廊下ではなく、ベランダ タイプなので、作業員の移動に苦労した
塔屋には日装の広報を掲げた
設計・監理者:一級建築士事務所 株式会社T.D.S
■本社
〒103−0012 東京都中央区日本橋堀留町一丁目6−13 昭和ビル3階
☎03−5649−3666
代表者:大森 勇
創業:1979年(昭和54年)
資本金:5,000万円
//www.tds-arc.com
施工者:株式会社 日装
■本社 〒160−0022 東京都新宿区新宿2−13−12 住友不動産新宿御苑ビル
☎03−3354−4191
代表者:有澤秀久
創業:1959年(昭和34年)
資本金:1億円
//www.nisso-x.co.jp
工事データ
○工事名/南柏パークハウス大規模修繕工事
○建物概要/ 1974(昭和49)年竣工・SRC造・地上8階建て・ 2棟・142戸
○発注者/南柏パークハウス管理組合
○設計・監理者/㈱T.D.S
○施工者/㈱日装
○主な工事内容
1.共通仮設/現場事務所、作業員詰所、倉庫等の設置
2.直接仮設/足場組み立て・解体、メッシュシートの 設置
3.下地補修/躯体のひび割れや爆裂、モルタルの浮き の補修
4.シーリング/窓回り等の古いシーリング材を撤去、 新しく充填
5.洗浄/外壁を高圧洗浄機で水洗いし、表面の汚れや 脆弱な塗膜を落とす
6.外壁等塗装/壁面や天井の塗装
7.鉄部等塗装/主に開放廊下内にある鉄製建具等の塗装
8.防水/ルーフバルコニー・バルコニー内の防水工事
○工期/ 2018年7月~ 12月