管理組合主導でリーズナブルな 鋼版パネル耐震壁補強工法を採用

労住まきのハイツ住棟建物4棟の耐震補強工

2014年6月、管理組合主導でリーズナブルな耐震改修を完工し、関西圏で注目を浴びたのが、大阪府枚方市に立地する築39年(当時)の管理組合法人労住まきのハイツだ。
4棟の建物は1975年竣工で旧耐震基準であったが、住民は当初、耐震改修には乗り気ではなかった。それは耐震化のための診断、設計、施工に億単位の費用がかかること、行政の助成制度があっても制約が多く、書類作成に手間がかかることなどが主な理由である。
ところが、約130管理組合の連合組織として活動するNPO京滋マンション管理対策協議会(京滋管対協)が主催した耐震改修セミナーへの参加で「自分たちにもできる耐震改修がある」ことを知った。
当日のセミナー講師は西澤秀和・関西大学教授。西澤教授は鉄骨構造学や耐震工学等が専門で歴史的建造物の保存修復などを手がけている。
また、阪神・淡路大震災では被災して傾いたマンションを復旧によってよみがえさせるなど、建物を社会資産ととらえ、長寿命化に取り組む工学者としても有名だ。
その西澤教授に耐震調査と耐震対策の検討を依頼し、耐震改修の方向性を見出していくことになる。
しかし、労住まきのハイツは「ただお任せ」するだけではない。西澤教授も含め、京滋管対協の谷垣千秋幹事ら専門家に依頼し、管理組合内の理解や周知ができるよう、シンポジウムを開くなど、管理組合主導の工事であるという方向性はぶれなかった。
最終的に管理組合が選んだのは鋼版パネル耐震壁補強工法」。建物内の階段室やエレベーターホール、廊下などに鋼板パネルを設けて補強するものだ。
Is値(構造耐震指標)は国が求める0.6を上回る0.8とした。
行政の助成制度を利用すると、鉄骨ブレースによる補強が求められるが、この工法は景観的にも費用的にも自分たちのマンションには合わないと判断した。
施工者は5社のコンペで小野工建を採用。西澤教授が代表のNPO文化財修復構造技術支援機構が行った耐震対策業務・設計・監理への費用が1,134万円、小野工建の契約工事費用が6,090万円、トータル7,224万円。ゼネコンに頼めば億単位がかかるケースだ。
管理組合理事長は「西澤先生に耐震相談をして、手の届く耐震改修だと納得できた。このため臨時総会で工事を決めるまで1年半かからなかった。うちは『100年マンション』が合言葉。建物を壊さず住み継ごうと思っている」と話している。

※ 参考文献『週刊金曜日』2014年8月29日/第1005号38ページ・山岡淳一郎著

工事データ

○工事名/労住まきのハイツ住棟建物4棟の耐震補強工事 ○建物概要/ 1976年(昭和51年)竣工・RC造7,8階建て・4棟・380戸 ○発注者/管理組合法人労住まきのハイツ 

○主な工事内容/1号棟~4号棟のバルコニー側・階段室・廊下の鉄板補強 ○耐震工事の流れ/調査・レーザー探査→仮設・養生→塗膜剥離・はつり→下地補修→アンカー打設→耐震工事(配筋工事→鋼板建込→グラフト工事)→下地処理塗装→仕上げ 

○工事期間/ 2014年1月14日~6月30日