傾斜地、法面、吹き抜け… ロープ工法採用で工事を敢行

アーバンコンフォート横浜和田町大規模修繕工事

アーバンコンフォート横浜和田町の完成から丸12年が経った2013年7月、管理会社の提案により修繕委員会を立ち上げ、大規模修繕工事の進め方をもとに取り組み方から資金計画まで、一連の協議に入った。
募集した修繕委員は当初3人。これに理事4人を加えた7人で第1回大規模修繕工事のスタートを切った。
ただ、この修繕委員会のそれからの情報収集、修繕工事知識の習得、居住者へのアプローチ(アンケート等での周知)には目を見張るものがあった。
そもそも傾斜地にあり、西側は法面、南側に戸建て住宅が隣接し、マンション内も吹き抜けのような造りになっていて、立地条件、構造が特殊なマンションである。
修繕委員長の佐藤眞一さんはいう。「勉強をはじめて、国土交通省や管理会社が提案する修繕工事は、いわゆるひな型であってパッケージ商品ではないか?うちのマンションが合わせることはないのではないかと疑問を持った」。
こうした思いから「修繕委員会は『自分たちのマンションは、自分たちがリードする』『できない理由を考えない』をモットーに、将来の2回目、3回目の修繕工事を考え、今現在のベストな修繕工事を理事会に提案できるように」尽力していくことになる。
居住者もこれに応え、第3回修繕委員会時にメンバーが11人に増加。3回行ったアンケートも常に100%の回答を得た。
管理会社の建物調査診断や居住者からのアンケートをもとに不具合個所の優先順位の検討を開始。優先順位から外れるものは毎月出している「第1回大規模修繕委員会NEWS」でていねいな説明を行った。
大規模修繕工事に先行して行ったのが、加圧ポンプの更新をやめて直圧給水方式への変更と一部激しい劣化部分の鉄部塗装。直圧給水によって不要となり撤去した受水槽跡は、大規模修繕工事時の資材置き場となった。
修繕委員会が大きな影響を受けたのは毎月参加している地域のマンション交流会と、ロープ工法を用いて行った近隣マンションの大規模修繕工事見学会だった。
立地や構造を考えると仮設足場が設置しにくい。また、ロープ工法を用いると仮設足場代が約1/3となり、工事費全体も半分以下という見積もりを得た。
足場をかけないロープ工法の場合、降りながら作業をするため昇ることができない、ブランコが揺れるため工程によっては力が入りにくいなどの欠点もある。一方、足場代を節約できるほか、メッシュシートがないため日当たりの悪さを気にしないでもよく、圧迫感がないというメリットもある。
結果として、近隣マンションを手がけたロープ工法を得意とする㈱エーファイブを施工者に採用した。ただし、㈱エーファイブの木村康三社長も「足場が設置できる場所では足場作業を提案します」と話す。さまざまな条件を踏まえて、適切な選択をする――修繕委員会が尽力した情報収集が集約され、目指す「今現在のベストな修繕工事」に行き着いたといえるのではないか。

工事データ

○工事名/第1回アーバンコンフォート横浜和田町大規模修繕工事 ○建物概要/ 2001年(平成13年)竣工・RC造地上6階建て、地下1階建て・38戸 ○発注者/アーバンコンフォート横浜和田町管理組合  

○主な工事内容/共通仮設/外壁タイル補修/外壁塗装/屋上防水/共用廊下・バルコニー防水/共用部分照明のLED化/ BS/CS110°アンテナの設置/その他 ○工事期間/ 2014年9月5日~ 12月15日