特別編=機械式駐車場リノベーション=

機械式駐車場撤去①

横須賀市・1998年竣工・SRC造・701戸

4段昇降横行型605台を解体、11億円かけ立体駐車場建設へ 

 

4段昇降横行型605台。1カ所に故障があると25 ~ 30台の車の出し入れができなくなった。日頃も通勤時は車を出すのに15分~ 20分待つのは当たり前だった。
 こうした不便さ、車両制限による駐車場利用率の低下、毎月のメンテナンス費や将来的な建替え費用の莫大な支出などの理由で機械式駐車場すべてを撤去、一気に自走式立体駐車場の建設に踏み切った。
 総工費は約11億円。修繕積立金を使い切ることができないため、6割を借り入れ。これまで管理費会計に入れていた駐車場使用料を独立会計とし、借入金の返済やメンテナンス費用にあてていくこととした。
 工事期間は約1年。この期間の仮駐車場をマンションから車で15分の横須賀市の土地を借りることができた。管理組合負担でシャトルバスを日に往復40本運行。さらに仮駐車場代も管理組合の負担とした。
 工事完成後は、「待つ」ことがなくなった使用者の利便性に加え、駐車場を独立会計としたことで借入金を返済し、将来は支出のない駐車場経営の展望が見えてきたという。

工事前、既存の機械式駐車場

施工中、機械式駐車場を解体・撤去

立体自走式駐車場が完成

機械式駐車場撤去②

川崎市川崎区・1999年竣工・RC造・101戸

メンテ費が管理費会計を圧迫、解体後は平置き6台分が積立金へ

既存の駐車場は、新築当初より1階住戸の専用庭の一区画にある専用使用権付き平置き駐車場12台と、機械式駐車場75台が設置されていた。
 この機械式駐車場は築年が進むにつれて借り手が徐々に減り、最終的に25台分ものパレットが空いた状態が続くことになってしまった。155cmという車高制限があり、流行のミニバンなどは外の民間駐車場を借りざるを得ないことも原因と考えられた。
 駐車場使用料収入は管理費会計に60%、積立金会計に40%組み込み、メンテナンスは管理費会計から支出していた。メンテナンス費は1パレット3,000円×年6回×75台で合計年間135万円。このため、収入とならない空き駐車場分は「無駄な出費」となっていた。
 管理組合は2009年、1回目の大規模修繕工事に併せて、25台分の機械式駐車場を解体・撤去・整地を総会で決議。その工事費用は約300万円であった。
 25台分のメンテナンス費45万円で換算すると6年半で回収でき、また電気代や修繕費、将来の建て替え費等の節約にもなる。
 解体後は平置き6台分とし、使用料収入を積立金会計に組み込むようにしている。

解体される前の機械式駐車場25台分

施工中の地下部分

撤去後は平置き6台分を確保

駐車場Q&A

Q1. 機械式駐車場を自走式立体駐車場に変えることによるメリット・デメリットは?
A1. メンテナンス費、修繕費等の節約ができるメリットがあります。
  ただ、自走式立体駐車場はバリアフリーに関しても車のスロープはあるが歩行者の昇降はどうするのか、消防車の侵入通路の問題、防犯関係では死角ができてしまうと防犯カメラの導入、低層住戸の景観・圧迫感などの問題をクリアする必要があります。
Q2. 機械式駐車場285台のうち23台(約8%)で空きがでている。空いているところは住民に1日500円で貸し出しをしているが、借り手も少ないため、23台分の空き駐車場の対応を考えているところです。
A2. 空き駐車場を区分所有者に貸し出している場合は全部非収益事業となり管理組合に所得税等がかかることはありません。また現在は1日という短期間の貸し出しなので収益事業(駐車場業)にも該当しないといえます。
  ただし、募集を広く行い、使用料金、使用期間など貸し出し条件において区分所有者と非区分所有者で差異がない場合、単なる市中の有料駐車場と変わらないということになり(国税庁の見解)、駐車場業としての収益事業に該当することを注意してほしいと思います。

大規模修繕工事新聞(120号)

全建センター/駐車場リノベーション機構では下記のような駐車場のさまざまな問題をワンストップで解決するための相談を受け付けています。
(1)駐車場使用料の会計処理、税金対策
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