材料のグレードアップこそ 管理組合の賢い選択・節約の手法

ラヴィドール田無ステーションフロント大規模修繕工事

 もはや民間マンションでは一般的な陶磁器タイルだが、モルタルの目地部分は酸性雨や塩害、凍害等の影響で徐々に劣化していく。こうした劣化によって水分がタイルの裏側、躯体のひび割れから内部に侵入し、コンクリート内の鉄筋にサビが発生、タイルの浮き、剥がれ、爆裂につながっていくことになる。
 今回設計コンサルを担当した株式会社T.D.Sは「外壁タイルの張り替えが、見本焼き、本焼きとも現状とほぼ同等に仕上がり、施工後もほとんど張り替えた個所がわからないほどうまくいった例」と話す。
 屋上の斜壁部については漏水の経緯があったことから、下地補修を行った後にセラミック浸透性の吸水防止材を施工する方法を採用した。外壁斜柱のタイル部分については表面に吸水防止効果を発揮する吸水防止材を施すことによって、雨水をブロックし、汚れの付着を抑制する。
 また、通常の弱溶剤系塗料よりも低臭気のため、住まいながらの改修工事にも適しているという。これも設計コンサルの提案で管理組合、施工会社との打ち合わせで実施したものである。
 どこに、何に費用をかけるかが管理組合の今後の大規模修繕工事におけるピックアップポイントといえそうだ。

 そして工事費用のシェアが大きいのが足場。今回の現場では1階がピロティ式の駐車場であり、工事中でも車の出入りに支障がないよう、角度や高さの設定が自由なブラケット式足場を採用した。
 ブラケットとはパイプなどに取り付ける固定金具のこと。本仕様の足場が確保できないスペースで設置した。パイプを金具(ネジ)で固定するため、施工中の音が静かというメリットもある。中高層マンションでも採用が
広がっている。
 住民対応として近年、一般的になっているのが、工事状況のインターネット化。工事期間中は居住者のみが確認できるようID・パスワードで 管理したマンション専用
のホームページを開設。工事の進捗や洗濯物干し情報(バルコニー使用の可・不可)をパソコンやスマートフォンで戸別に確認できるシステムが導入した。

 防犯対策にも注力。足場の出入り口には侵入防止の金網・オートロック式の防犯ドア・防犯カメラ・人感センター付きライトを設置して、居住者の安心への配慮を行った。

工事データ

○工事名/ラヴィドール田無ステーションフロント大規模修繕工事 ○建物概要/ 2002年(平成14年)竣工・RC造地上9階建て・1棟・69戸 ○発注者/ラヴィドール田無ステーションフロント管理組合 
○主な工事内容/
・共通仮設/現場事務所、作業員詰所、植栽棚、資材倉庫等
・ 直接仮設/作業足場設置・解体、メッシュシート、足場出入り口には侵入防止の金網・防犯ドア(オートロック)・防犯カメラ・人感センター付きライトを設置
・ 下地タイル補修/下地調査(目視・打診調査)、清掃及び既存脆弱塗膜補修、ひびわれ補修、 タイル張替、タイル浮き注入、鉄筋爆裂補修、モルタル浮き補修ほか
・ シーリング/打継目地、外壁縦目地、手摺壁目地、手摺支柱根元ほか
・外壁等塗装/外壁、手摺壁内側、各所天井ほか
・ 鉄部塗装/縦樋、玄関扉枠・MB・PS扉、 隔板 機械式駐車場ゲート 、パーゴラほか
・ 防水/屋上勾配部(保護塗装)、ルーフバルコニー(ウレタン塗膜防水・通気緩衝工法)、ベランダ(不良部のみ長尺塩ビシート)、共用廊下(不良部のみ長尺塩ビシート)、庇(ウレタン塗膜防水
・ 内装、その他工事/エントランスクリーニング、ルーバーフェンス洗浄、駐車場吸音クロス部分張り替え
○工事期間/ 2014年8月16日~ 12月27日