「スラブ上将来接続口」を設置 段階的に全戸スラブ上配管化を目指す

かわつる三芳野団地中層棟給排水設備改修工事(工事対象は中層棟400戸)

既存の洗濯排水トラップ(スラブ貫通部)

 まず、今回の工事は47棟・548戸のうち、5階建ての中層15棟・400戸の給排水管の更新工事がベースである。
 しかし、ここではオプション工事となった「ユニ ッ ト バ ス リフォーム」に焦点をあてたい。
 既存は在来浴室のスラブ下配管。上階の排水枝管が下階の天井内を通って共用立て管につながっている。枝管は専有部分でなく共用部分として取り扱うことが判例により一般化しているので、管理組合が主体となって改修工事に取り組むことになった。
 スラブ下配管では、スラブ貫通部周辺からの漏水が多くなるが、実際、原因個所はなかなか突き止められない。この原因を突き止めるには浴室全体をリフォームすることが手っ取り早い。
 しかし、各戸リフォームに任せておくとコンクリート床に埋まっている排水金物まで改修しにくいため漏水の原因個所はなくならず、また、各戸リフォームではスラブ下配管のままであることは変わらない。コンクリートに埋まった古い排水口はそのまま残され、漏水事故の危険性はますます大きくなる事態を招くことになる。
 こうしたことから、管理組合が全戸一斉リフォームに導くことが理想的であるが、各戸の金銭的な問題やすでにリフォームしてしまったなどの理由で現実的ではない。
 その突破口として管理組合は「段階的スラブ上化改修手法」を選択した。今回は排水立て管の更新にあわせ、在来浴室のユニットバスリフォームを同時オプション工事として組み込むことで、一定数の浴室排水管のスラブ上化を実現する。今回の工事を見合わす住戸に対しては、将来リフォームする際に適切に排水管を接続することができる「スラブ上将来接続口」を設けて対応することとなった。
 結果的に今回の工事で47%の住戸で一気に排水管スラブ上化が完成した。残りの住戸については、将来リフォームを行う際にスラブ上化の具体的な施工マニュアル(浴室リフォーム細則)を議決し、マニュアルに沿ったリフォームかどうかを審査する体制を作った。
 浴室のリフォーム時期を各戸にゆだねながらも、排水管の適切な接続をマニュアルに盛り込み、「段階的」ではあるが将来的に全戸スラブ上化を目指すことができる。

  設計・監理を担当した柳下雅孝・一級建築士は「スラブ下配管の問題で苦労している団地・マンションは全国に数多く存在するが、その管理組合に明るい兆しと勇気を与える事例であることを確信している」と話している。

工事データ

○建物概要/ 1982年(昭和57年)8月竣工・RC造(一部PC造 )・47棟・548戸( 中 層 棟: 5 階 建 て・15棟・400戸+低層棟:2階建て・32棟・148戸) ○工事名/かわつる三芳野団地中層棟給排水設備改修工事(工事対象は中層棟400戸) ○発注者/かわつる三芳野団地管理組合法人 ○主な工事内容/共通仮設工事/共用給水管更新/1階床下排水管更新工事/住戸内専有管更新/共用排水立て管更新/付帯建築工事/オプション工事(ユニットバスリフォーム)○工期/平成24年4月~ 12月