工事会社による責任施工方式を採用、タイル不具合多数も組合主導で解決
工事データ
○工事名/ライオンズマンション平塚宝町大規模修繕工事 ○建物概要/1993(平成5)年1月竣工・RC造・地上14階建て・1棟・136戸 ○発注者/ライオンズマンション平塚宝町管理組合 ○施工者/㈱カシワバラ・コーポレーション
○主な工事内容
・共通仮設/現場事務所(集会室借用)、資材倉庫、廃材置き場等
・直接仮設/鋼製足場、外周メッシュシート張り
・下地補修/外壁タイル・コンクリート・モルタル(塗装、防水面)の不良部補修
・シーリング/外壁・サッシ回り等のシールの新規打ち替え
・外壁高圧水洗浄/外壁タイル面や外壁塗装面・防水施工面の洗浄
・外壁塗装/塗装されている外壁・天井の塗り替え
・鉄部/鉄扉・隔て板・竪桶等の塗装
・防水/屋上・ルーフバルコニーのウレタン塗膜防水、バルコニーの長尺シート貼り等
・その他/消火栓ボックス交換、エキスパンション交換、PS扉更新、防風スクリーン設置(9~14階)等
○工事期間/2018年1月~2018年7月
株式会社カシワバラ・コーポレーション
■東京本社
〒108-0075
東京都港区港南1-8-27 日新ビル9階
でんわ03-5479-1400
代表者:柏原 伸介 設立:1949年(昭和24年)3月
資本金:2億5,010万円
//www.kashiwabara.co.jp
平塚駅から徒歩3分、商業施設が近くて生活の便がよく、ワンルームや1K、1DKタイプ(16㎡~40㎡)の専有部分が半分以上あることから、賃貸率は6割を超える。
このため、居住する区分所有者の理事会が中心になって近隣マンションの工事を見学したり、居住者から不具合の聞き取りなどを行いながら、2回目となる大規模修繕工事のイメージを立てていったという。
今回の工事の特徴は、管理組合が施工会社を選定した上で「責任施工方式」で行ったこと。責任施工方式とは、管理組合が施工会社に修繕工事の仕様作成から施工、チェックまですべてを任せる方式で、設計や工事監理を施工会社とは別の設計事務所等、第三者に依頼する「設計・監理方法」と区別される。
管理組合が無関心で管理会社に「お任せ」のマンションの場合、管理会社による責任施工方式で工事を進めることは多いが、管理組合が自主的に工事専門会社を選定して責任施工方式を採用するケースはさほど多くない。
管理組合では工事中に他の管理組合への情報公開として現場見学会を実施。この中で、理事長は責任施工方式を採用した理由を次のように説明していた。
「設計コンサルタントは委任契約で、工事の責任は請負契約の工事会社のみ。責任がないのなら設計に支払う費用より、工事会社に信頼をおいたほうがよい」
管理組合では近隣マンションを施工した工事会社など、8社から見積もりをとり、結果的に㈱カシワバラ・コーポレーションを選定した。
工事での大きな問題は、足場をかけてからタイルの不具合(浮き、ひび割れ、剥落)が多数判明したことだ。これは東日本大震災の影響によるものが多く、賃借人の多い住戸で不具合の情報も少なかったことから、タイルのダメージは実数調査で見積もり時の約5倍みつかった。このためタイルの焼き増しで工期を延長、タイル工事の騒音の期間も延びることになってしまった。棟と棟をつなぐエキスパンションジョイントも大震災によりつぶれてしまっていた。
また、海に近く、JRの沿線に立地するため鉄粉の影響から、パイプスペース(PS)扉や消火栓ボックスも塩害によるサビで腐食がひどく、多くを交換。9~14階の渡り廊下には防風スクリーンを設置し、住環境の改善を図った。
工期の延長による住民の負担も、管理組合が理解を得ること。管理組合主導の工事であるという意識があれば、責任施工方式でも現場作業は問題なく、工期を終えるものだといえる。
(大規模修繕工事新聞104号)
現場見学会を実施し、近隣マンションに情報提供を行った
東日本大震災でずれたエキスパンションの交換
パイプスペース(PS)扉の交換
消火栓ボックスの交換
9~14階の渡り廊下に防風スクリーンを設置
天井の細部を刷毛で塗装
幅の広い塗装面はローラーでむらなく作業する