耐震改修後に大規模修繕工事 長い工期も住民の協力あってこそ
川崎市/河原町分譲共同ビル
理事会の諮問機関である大規模修繕委員会は平成23年5月、耐震診断結果を報告する住民説明会を開いて、震度7に耐えられる工事の提案を行った。
実は、長期修繕計画の上では2回目の大規模修繕工事を実施するための検討をはじめたところだった。しかし同年3月11日、東日本大震災が発生。「改修と耐震とどっちが先か…やっぱり命が大事」(神品勝征理事長)と、耐震改修を先に、大規模修繕を後回しにすることが決まった。
耐震改修は診断や助成金申請などを経て、平成26年7月から13カ月間をかけて実施。その3カ月後の平成27年11月から、今度は9カ月間に及ぶ大規模修繕工事を行った。
工事内容では、基本的な外壁補修、シーリング打ち替えなどのほか、棟をつなぐ渡り廊下の壁の改修では耐震ブレースに色を合わせた塗装。住戸排気口の交換または塗装、物干し金物の全戸交換、アルミサッシ部品(戸車、クレセント等)交換など、在宅な必要な部位も行った。
神品理事長は「工事の監督は管理組合の役目。これをしっかりすれば、施工業者の職人にもいい仕事をしてもらえる」と話す。「施工業者も住民の協力があるとやりやすいでしょう」。
大規模修繕委員会18人は毎月2回、設計コンサルと施工業者との定例会を開き、工事の進捗状況や工事の提案・選択・決定など細かに決めていった。
もっとも、長い工期の耐震改修の後、さらに長い大規模修繕工事をやると、「住民も職人の作業をよく見ていた。
それでどんどん知恵をつけて行った」とも。
そもそも700戸超の大規模マンションながら自主管理を続けてきた。管理組合運営は、多くの専門委員会の設置など、他の追随を許さないほど充実している。
神品理事長は工事がうまく行くか行かないかのポイントを「あくまで主体は管理組合。住民の関心をいかに工事に向けられるか」と断言。大きな2つの工事が終わったことで、今後は管理規約の見直しなど、ソフト面の対応に着手していくとしている。
※ 神品理事長に耐震改修と大規模修繕を一緒にできなかったのかと、単純な質問をしたところ、「耐震は鉄骨ブレースを新設するため、中庭を掘り起こして杭を打つ必要があり、大規模修繕用の足場が設置できなかった」ということだった。
(大規模修繕工事新聞 第86号)
工事データ
○工事名/川崎河原町分譲共同ビル外壁等大規模修繕工事
○建物概要/ 1975年(昭和50年)10月竣工・SRC造・地上12・14階建て・6棟・住戸693戸+26店舗
○発注者/河原町分譲共同ビル管理組合法人
○主な工事内容
・ 躯体回復/外壁塗装面の清掃(高圧水洗浄・エアブロー・ブラッシング等)、躯体補修(亀裂・爆裂・浮き等)
・ 外壁等塗装/外壁塗装部、屋外階段塗装部、屋内階段、上裏塗装部の塗装等
・ シーリング/アルミサッシ、建具、手摺、廊下ガラスパネルまわり等のゴム状シーリング材の打ち替え
・ 防水/屋上、EV機械室屋根、外部階段屋根・R階ベランダ、EV機械室横階段、屋上出入口、 2・3階店舗屋根、2階ベランダの防水
・ 床防水/ベランダ、廊下側ベランダ、妻側ベランダ、廊下、玄関踏込、階段、2階通路、ベランダ庇、EVホールベランダ、渡り廊下、階段室の防水
・ 鉄部塗装/避雷針、パーテーション、雨樋、玄関扉枠、PS扉枠、MB扉枠、シャッター、店舗出入口扉枠、駐輪場等の共用部の塗装
・ その他/雨樋支持金物交換、物干し金物交換、防火扉改修、アルミサッシ部品交換等
○ 工事期間/ 2015年11月1日~ 2016年7月31日(約9カ月間)