共用・専有給水・排水管の一斉交換 1度の工事で経済的・精神的な負担に配慮

前田ハイツ住宅給排水設備更新工事

 9月10日、戸塚区にある前田ハイツ住宅(自主管理・440戸)で定員をはるかに上回る52人が参加し現場見学会が行われた。工事内容は、給水方式の直結化と共用部分・専有部分の給水・給湯・雑排水管の一斉更新。
きっかけは平成25年に行った長期修繕計画に基づく設備劣化調査(当時築36年)。翌年、コンサルタント会社である建物保全センターが室内立入調査を実施。調査の結果、前回の給水管ライニング更生工事の塗膜剥離、錆こぶ、腐食等の劣化がみられたことから、配管の全面的な更新工事の必要性が浮上した。
平成24年の大規模修繕工事以降、新旧理事を含む30人規模の「専門委員会」を継続し、工事内容を検討。当初は配管更新のみの計画が進められたが、「この機会に給水システムの見直しを」との声が上がり、受水槽のある加圧給水方式から、本管から直接引き込む直接増圧方式への変更を実施することになった。
今回の工事は専有部分も含め、管理組合の修繕積立金ですべて実施したが、一部排水管が下階天井裏配管となっている。すでに管理規約では専有配管も共用扱いで工事ができるように変更されており、さらに今回の総会で区分所有者全員の同意を得て工事に踏み切った。

受水槽のある加圧給水方式から、本管から直接引き込む直接増圧方式への検討を開始した。
平成27年、新旧理事を含む30人規模の「給排水設備更新工事専門委員会」を発足。抜管調査などから、前回の給水管工事でのライニング塗膜の剥離、錆こぶ・腐食等の劣化がみられたことから、全面的な更新工事の必要性が浮上した。
室内工事は6日間。その間居住者は在宅を余儀なくされる。しかし、管理組合、設計コンサルタント、施工者の数回にわたる説明会を経て無事工事を進捗している。住民目線の使いやすい仮設トイレ・モデルルーム等も大きな役割を果たしている。
また、給水方式の直結化は省エネといわれるが、実証データがあるわけではない。今回、管理組合の依頼で工期中にデータを計測したところ、電気使用量が施工前の34%まで削減されることがわかった。
進行中の工事について、川本工業の小松現場担当は「連絡が取れない所有者にもすべて組合主導で動いてくれた。とにかく理事さんが前面に立ってくれるので非常に工事がやりやすい現場です」と話す。
設計コンサルタントの建物保全センター・福市社長も「管理組合内部の合意が取れれば、経済的にも、精神的にも配管の工事は1度で済ませたほうがいい」と語る。
共用部分の給水・排水、専有部分も含めて管理組合の計画として検討していくことは、長期的な視野でのメリットにつながることは間違いない。
とはいえ、合意形成や実際の立ち入り工事をするための準備は容易ではない。前田ハイツは新旧理事など、建物の歴史を知っている人が集まり、住民同士のコミュニケーションがしっかりしている管理組合だからこそ、他のマンションが見習える工事を実施できたのではないだろうか。

現場では川本工業のスタッフが
引率しながら工事の様子を説明

新設した直結増圧ポンプ。
180戸向け・260戸向けと
2台設置

メーターボックス内の既存(左)と工事後の様子

トイレ内に設置されている、更
新した雑排水立て管(左)と既
存の汚水管(鋳鉄管)

浴室や洗面・洗濯室は配管を
露出し、化粧カバーで覆った

工事データ

○工事名/前田ハイツ住宅給排水設備更新工事 ○建物概要/1977(昭和52)年竣工・RC造・地上5階建て・15棟・440戸 ○発注者/前田ハイツ住宅管理組合 
○主な工事内容
①直結増圧給水改修工事(加圧給水ポンプ方式→直結増圧方式)
②専有部分・共用部分給排水・給湯管更新工事
○工事期間/2016年1月23日~2016年10月31日(予定)