マンション標準管理規約によると、窓サッシ(窓枠)、窓ガラス、玄関扉などの開口部は「共用部分」と扱うことと定められている(第22条)。原則として、管理組合の責任と負担において計画修繕を行うことになり、戸別の区分所有者が勝手に修繕をしてはならない。
とはいえ、高経年マンションでは経年劣化の進行が各戸によって異なっていたり、管理組合で合意を得ることが難しいケースがある。こうしたマンションでは雨の吹き込み、結露等に悩まされている住戸もあり、標準規約では「一部の住戸において緊急かつ重大な必要性が生じる場合」を鑑み、「各区分所有者の責任と負担において工事を行うことができるよう、細則をあらかじめ定める」ことができるとも規定している。
ただし、計画修繕を定め、管理組合主導で全戸対応をすることが前提である。このページでは『修繕奮闘記』特別版として、過去記事より「全戸一斉サッシ改修」を行った2事例を掲載する。
省エネサッシ改修
環境省から補助金1.4億円
「地域協議会民生用機器導入促進事業」の補助対象となったのは、高断熱住宅等へのリフォームの省エネ資材(サッシ・ガラス等)を住宅に導入する事業。交付資格としては、地域協議会の会員、設備機器導入件数は10 件(戸)以上などという制限がある。マボリシーハイツは全596戸の設備機器導入となり、熱貫流率や電気の使用量、エアコンの使用時間などから計算すると、改修前後のCO2 排出量は、年間約70t削減される。
補助交付額は、対象事業(省エネサッシ等導入)費の1/3に当たる1.4億円。
また、各戸専有部分の固定資産税の1/3が減免されることから、管理組合では工事後に設計・監理を担当するアワーブレーン環境設計の建築士が発行する証明書をもって、横須賀市に減免申告を行い、受理された。
サッシ改修について、改修前は日射がまぶしいくらいに差し込んでいたが、改修後は特殊金属膜のある複層ガラスで、遮熱効果があり、紫外線も大幅にカット。冷暖房の負荷の軽減、内装や家具の色あせ防止等に効果を発揮している。目の前を幹線道路が走っている棟でも、窓を開けているのと閉めるのとでは、はっきりと大きな違いを感じることができる。
住民によると、「改修前は台風が来ると雨が吹き込んで、置いた雑巾もすぐにびしょびしょになった」。気密性の高いサッシに交換したことで、「そのような心配はもうありません」と話している。
(大規模修繕工事新聞92号)
工事データ
○建物概要/築31年・22棟・596戸・PC造・5階(一部2,3階)建て
○工事期間/2008年3月~12月
改修前と後。改修後は特殊金属膜のある複層ガラスで、遮熱効果があり、 紫外線も大幅にカット
気密性の高いサッシに交換したことで台風でも雨の吹き込みがなくなった
ハンドルは開閉がしやすいユニバーサル仕様に