ローレルスクエア都島エル・フラッツ大規模修繕工事
2003年竣工、1回目の大規模修繕工事だが、すでに発足している修繕委員会が中心となって数年前から計画を進めていた。その修繕委員会のメンバーである一人は大規模修繕工事計画の取りかかったころを振り返り、「長期修繕計画をもとに工事時期の確認を行い、着工の1年前にコンサルタントを決めた」と話す。
設計コンサルタントは修繕委員の情報収集により6社をリストアップ。書類選考や将来も長期的に会社が存続するのかという視点で3社に絞り、そこから見積もり、ヒアリングを行ったという。
「ヒアリングでは、技術的、専門的な話ではなく、素人がわかるよう品質管理をどうするのか説明してくれと聞いたんだけど、しっかりとした返答がなくてね。結局、一番誠意を感じた会社を選んだ」
その後、施工業者の選定では公募で26社集まったというが、会社規模や財務内容等で12社に絞り、見積もり依頼で6社、さらに再見積もりした3社にヒアリングを行った。
このヒアリングが管理組合の極めつけ。進行や質疑応答は設計コンサルタントではなく、修繕委員が中心に行った。理事会メンバーは傍聴席。3社のプレゼンの持ち時間は各15分のみ(一般的には30分~ 40分)。質問の返答ができるのは担当する現場代理人だけで、営業担当は口をはさめない。そして…投票権があるのは傍聴席の理事会メンバーだけで、修繕委員には、それがないのだった。
実は、これは施工者には知らせていなかった。進行係で質疑をする修繕委員ばかりに目を向けていた施工者を選ぶ人々は傍聴席に座っているという仕組みだったのだ。
これには選ばれた小野工建の営業マンも「知りませんでした」と脱帽。修繕委員会がリードしながらも、理事会の諮問機関であるという意識付けがしっかりしている組合運営といえよう。
工事開始してからもやはり品質管理に重点をおく。作業員からは危険予知(安全確保)のほか、QC(QualityControl=品質管理)のチェック表を作業前に配布し、作業後に提出させている。
とはいえ、修繕委員会の居住者対応も万全。駐車車両の移動や工事エリアと生活動線を完全に分けた。「工事中の生活が不便でも中途ハンパな配慮はいらない。作業効率を優先することを明確にすれば居住者のクレームも少ない」と修繕委員が話してくれた。施工業者にとっては厳しくも心強い修繕委員会である。
工事データ
○工事名/ローレルスクエア都島エル・フラッツ大規模修繕工事 ○建物概要/ 2003(平成15)年竣工・SRC造・地上15階建・3棟・158戸 ○発注者/ローレルスクエア都島エル・フラッツ管理組合
○主な工事内容
・ 共通仮設/現場事務所・トイレ、作業員詰所・資材置場・廃材置場等、工事に必要な仮設物の設置
・ 直接仮設工事/建物周囲への鋼製枠組み足場、外部メッシュシート養生等
・下地補修
1)コンクリート部分/ひび割れ、浮きなどの補修等
2) タイル部分/ひび割れ部分などの補修、新しいタイルの貼り付け
・ シーリング/外壁塗装面、タイル面等の目地やサッシ周辺などのシール打ち替え等
・内外壁塗装/各所の塗装
・鉄部塗装/各所鉄部の塗装
・防水/各所のウレタン防水、塩ビシート不良部の補修
・その他/内階段のシート貼替え等
○工事期間/ 2015年9月28日~ 2016年3月31日